夏休みのナナメカフェ(noName -noName cafe for teens-)は、お昼過ぎの1時からオープン。
毎日毎日、もう十分すぎるほど暑いのに、開店前からティーンたちが待ち構えています。
今回も、カフェに集まるティーンたちと「距離感」について、私たちの視点からお伝えしたいと思います。

なんかワールドカップの決勝みたい

ゲームの大好きなティーンたち。
PC、スマホ、Nintendo Switch――
どのようなデバイスでも、たいていの人がゲームに触れています。
画面のなかに閉じこもっているのかと思えば、そうでもありません。
わざわざゲームをするために約束して、カフェに来て、合流するのです。
どうしても来られない事情があったらオンラインでつながっているものの、物理的距離を近づけて、同じ空間でプレイしたいと思うもの。
私たちも同じでした。
ゲームをするために誰かのおうちに集まったり、部室にゲームを持ち込んだり。
制服を着ていた頃にはスマホがなかったから、コロコロコミックも、ジャンプも全部回し読み。
先生や親に見つかるとマズい書籍やポスターの類を、「お前は絶対にマークされていないだろう」と預かることもあったし、「どうせ画面のなかなのに」と大人たちに呆れられても、同じところに集まってゲームをすることには、意味がありました。
「うおおぉぉぉぉぉ!!!!」
もちろん、限度はわきまえている人たちなので、ご近所迷惑になるほどのボリュームにはなりません。
それでも、きょうもエキサイトしている自分たちを、
「なんかワールドカップの決勝みたい(笑)」
と冷静に見ている人もいれば、
ちょっとお茶を飲んだら……と思うくらいに、発散し続ける人も。
いつか10代だったあなたにも、ご経験がありませんか。
理由もなく叫び出したくなる瞬間。
本日は、そんなnoNameティーンたちの様子を見てみましょう。
おまえら、外でやれ

ティーンが集まりますから、ちょっとした言い合いくらいは日々起こります。
じゃれあっているのかと思ったら、
「おいおまえ死ねやー」
「なんでや~(ニコニコ)」
「だーかーらー……」
いつも笑顔でニコニコしているDくん。
ニコニコと笑っているので、困っていないようにみえてしまうかもしれません。
「もう一回これしようや~(ニコニコ)」
「うるせえ死ねや」
「死ね」と言ったEくん本人に悪気はなく、じゃれあいのひとつとして発しているように思われます。
「なあ~遊ぼうやー(ニコニコ)」
無邪気なDくんにEくんが中指を立てていたり、もみあったり。
それを周りも面白がってしまう瞬間。
おまえら、外でやれ。
私たちはしずかに、声をかけます。
「死ねなんて言うな」と断じてしまうのは、簡単なこと。
けれどもそれは、彼らとタテの関係を結ぶことになってしまいます。
一旦待ってみれば、それ以上「死ね」とか、過剰なからかいはなくなっていくことがほとんど。
noNameのスタンスは、まずそこからです。
そのかわり、DくんもEくんも、かわるがわるスタッフのところにやってきます。
もう必要はないはずなのに、お菓子を求めるふりをして。
何度も何度も、学校の愚痴や流行りの音楽など、同じ話題ばかりを口にして。
今日は女子、なんで帰ったん

ナナメカフェに集まるティーンたちには、忙しい人がたくさん。
塾におうちの手伝いに、とタスクがたくさんあって、
学校帰りに宿題をおいて、一旦帰って着替えて、塾の用意をしてカフェに来て、おやつを食べたら塾に1時間ほど行って、またカフェに帰ってきて宿題をして、ちょっとだけ遊んで、帰る。
一旦来て、きょうだいを迎えに行って、またカフェに来て、お風呂掃除をして、また来て、帰る。
そんな人が何人もいます。
たまたま女の子たちが一時帰宅や塾の時間になり、退席していたときに、
「今日は女子、なんで帰ったん」
とFくん。
いま、たまたま用事が重なっただけだと思う、と伝えると、
「えー!なんで帰ったん」
普段そんなにべったりと一緒にいるわけではないのに、気になるのですね。
そのFくんがゲーム仲間のところに戻ると、ちゃっかりからかわれていました。
「◯◯ちゃん、帰ってきたでー」
誰かがFくんに言うと、「知らん」。
気になるのは当然のこと、と捉える私たちは、とくに咎めることも深入りすることもありません。
またからかいあっています。
おまえら、外でやれ。
アメニティケースをつくろう

ティーンから身体の悩みについて相談を受けることもあり、いつか必要になるだろう、という思いから生理用品をカフェに設置しようと考えていました。
ただ置いておくのは簡単なことですが、完全に隠してしまうのではあまり意味がありません。
ティーンたちの大好きなシールで、専用の箱をデコレーションしてもらうことにしました。
用意したシールも、自分たちが持っているシールも自由に選んで貼っていきます。
平成にギャルの世界を経験した私たちからすると、現代のティーンたちのセンスの高さに驚かされながら――
メインユーザーとなる女の子たちの反応も面白いものでした。
「ねえ、これなに?」
見たことのないデザインのナプキンを面白がってひらいたり、
「これかわいい!ほしい!」
好きなアーティストとのコラボデザインのナプキンをほしがったり、
「これ使ったことない!」
と、まだ持ち歩く習慣がないという人が、興味津々で眺めたり。
カフェの日には毎回、お手洗いに置いておくことにしました。
「困ったことがあったら伝えられるためのカードも、この箱に入れておく?」
大庭が彼女たちに尋ねると、
「ううん、いらない。大庭さんにそのときに言うからいい。いらない。それよりかわいいナプキン入れといてほしい。ママが買ってくれないやつ、使ってみたい」
わかりました。
ママに言えない。だって絶対――

カフェ常連のGさん。
お勉強をしたり、お気に入りのシールをひろげたりして楽しんでいる彼女が、
しばらく席を外して帰ってきません。
先週生理だと聞いていたけれど、熱中症かしら……
心配になって部屋の外に出て、お手洗いのほうに様子を見に行きました。
向かってみると、Gさんが洗面台のところで呆然としています。
大庭にトイレの個室に一緒に入ってほしい、と言うのです。
小学校6年生。
少々戸惑いましたが、ついていきました。
「あのね、漏らしたかもしれん。これって漏れてる?においはちがうんだけど、これってどうなってる?」
ショーツを脱いでみせてきました。
「断定はできないけれど、たぶんあなたの心配しているものではなくて、生理の血が残っているのがおりものにまじって出てきたんじゃないかなあ。そういうことって、よくあります。おかあさんには相談したこと、ある?」
「ママに言えない。だって絶対泣いて心配するから」
誤解を招かぬようにお伝えしておきますと、Gさんとお母さまとの関係性が悪いのでも、接し方に問題があるのでもありません。
お互いの優しさと思いやりがすれ違っているだけなのです。
距離が近すぎて相談しづらいことって、大人でもたくさんあるものです。
「そうか。おりものシート、持って帰ってみて。でも、おかあさんも知りたいと思うし、恥ずかしいことでもなんでもないから、一度相談してみてね。続くようなら、病院に行ったほうがいいこともあるからね」
彼女たちと一緒にアメニティケースに入れた、ナプキンを外で捨てづらいときに持ち帰るためのかわいい袋。
それに何枚かおりものシートをふたりで詰めて、大庭はお手洗いから出ていきました。
(持ち歩き用のサニタリーバッグ、こんな使い方もおすすめです。おすそわけにも、すこしのデリカシーと楽しみがあるとホッとしますね)
その日、彼女は帰宅してお母さまに相談できたそうです。
あれって、なに?

さりげなくアメニティケースをおいていると、男の子チームから質問を受けることがあります。
「あのキラキラのシールの箱、なに?」
「あれって、なに?」
武蔵でなく大庭にだけ尋ねてくるくるあたり、彼らはもうわかっているはずです。
「ああ、私も使うし、みんなで使うから置いているの。あなたも使う?」
「今んとこ、いらんと思う」
そんな会話をしながら、ゲームに興じる背中をみています。
中身を見てみたらいいし、気になったら開封して、捨ててみればいい。
なんなら、お掃除を手伝ってくれたって、かまいません。
おおげさなことをしなくても、これもまた性教育のひとつだと、私たちは考えています。
発散を許されない社会

「あれって、なに?」
その会話の次に、ゲームをお休み中の誰かが言いました。
「あーーーーーー!!また〇〇が彼女がどうのとか言ったんじゃ!うぜぇ!あいつ死ねばいいのに!」
「死ねばいいのに、って思ったら、一回筋トレするか走ってくるかしたら?まあいまは暑すぎるから、ここでプランクでもしいな。筋肉は裏切らないって話だよ」
夏休みやテスト期間前後になると、ティーンたちの暴言が増えていきます。
酷暑で外には出づらいし、学校との行き来も減り、部活動や遊びの機会も減るため、体力を持て余していることも大きな理由だと思っています。
夏休みになってから彼らの画面の中身も変わっていて、少々暴力的なシーンのあるゲームや、どこでフィルタリングを突破したのかと思わされる大人向けの動画が表示されている時間が増えています。
大人であれば、どうでしょうか。
家に帰る前に、コンビニやカフェに寄る。
居酒屋さんに寄る。
車のなかで誰にも邪魔されずに大声で歌う。
誰にも教えていない波止場に車をとめて、叫ぶ。泣く。
多かれ少なかれ、ストレスを発散するチャンスを持っている方が多いのではないでしょうか。
大人ですら、
「私には、そういう場所や時間はないなあ……」
という人も多いのに、
ティーンたちにはなおさら、その時間も、お金も、場所もありません。
学校に塾に、家の手伝いにと忙しく、
お小遣いもきまっているし、
成人しなければ入れない場所や、雰囲気的に立ち入りにくい場所がたくさん。
ストレスがたまるのは、大人でも子どもでも、ティーンでも同じことです。
暑いだけでも、ストレスはたまります。
発散するところが限られていると、暴言や喧嘩が増えます。
そして、目を背けないでいただきたいのが、
ティーンともなると、性的な衝動にもストレスがつながっているということです。
ともすればいじめや性犯罪、ととられかねない行動にでてしまったりする人も珍しくありません。
心と身体がつながっていることや、
変化の真っ只中にある自分たちの身体を御しきれない感覚もまた、
性的な衝動のオーバーヒートにつながることがある――
それを大人が全否定するものではないと、私たちは考えています。
「武蔵のパソコン、かわいくしてあげるね」
シールの卸問屋さんですか、と言いたくなるほど大量のシールを携えた女の子たちが、
武蔵のラップトップをシールで埋め尽くしてしまいました。
美しいとは言いかねる状況……
お客さまのところでは、このPCは開けなくなるな、と覚悟しながら、
「これはがれちゃうぞー」
と、武蔵は受け容れることにしました。
これもまた、彼女たちなりの「発散」なのです。
誰が勝ったっけな?アハハハハハ

ゲームゾーンのティーンたちは、
トーナメント表を書いて、そこに自分のニックネームを書き入れていました。
「おおおッッッ!!素晴らしい追い上げだ!総合優勝はッッッ!◯◯ですッッッ!!!」
いつのまにか実況役になってしまったHくんがそう叫ぶと、「うぉぉぉぉぉぉ!!」と歓声があがりました。
「おお!で、◯◯って誰?」
大庭がそう尋ねると、Hくんも周りにいた別の人たちも、おむすびをつまみながら
「誰が勝ったっけな?あいつかな?アハハハハハハハハ(笑)」
「アホー!△△じゃろー(笑)」
「俺じゃねえしー(笑)」
そうか、勝ち負けなんてどうでもよかった――
ゲームはダメ、勉強をしなさい、運動をしなさい、◯◯をしなさい――
そう言われて育ってきた人も、多いはず。
ゲーム依存症などの話もありますが、少なくとも、ナナメカフェにいるティーンたちの遊び方をみるかぎり、
ここでのゲームは必要なコミュニケーションツールになっているようです。
そして、
「今日は女子、なんで帰ったん」
と言っていたFくんが、言いました。
「今日はな、楽しかった。またあいつら(※女の子たちのこと)来ると思う?塾が忙しい?なんで来週ないん?お盆休みとか、聞いてねえし~。またな~(笑)」
それでもあなたは、
ゲームがダメ、と言えますか?
エロはダメだ、とタブーにしますか?
